製品紹介

NeXCell P870 細胞の製造目的に特化した、新時代のインキュベーター


NeXCell P870

近年の再生医療や細胞治療ニーズの高まりにより、本来研究用途であったCO₂インキュベーターが製造目的で運用される事例が増えつつあります。しかし、現状の製品は必ずしも特定細胞加工施設(CPC/CPF)における、GMP(Good Manufacturing Practice)やGCTP省令(再生医療等製品の製造管理及び品質管理の基準に関する省令)ベースでの運用に最適化されているとは言えません。弊社は長年の輸入製品販売と自社製造品の経験と知見に基づき、製造性と信頼性、管理コストの低減といった要求を満たす、「細胞製造のための装置」としてのCO₂インキュベーターを開発しました。

 

生産性の向上と幅広い用途拡大

細胞製造は、培養手法、規模が多岐に渡ります。従来、特定細胞加工施設での細胞製造では、一般的にはチャンバー容量が150~180Lといった、ミドルサイズの製品が多く採用されています。
NeXCell P870(NP870)はクラス最大級の870Lのチャンバー容積を実現した大型モデルです。ミドルサイズの製品と比較して約5倍のキャパシティがあり、生産性(=培養容器のサイズ・数量)を大きく向上することができます。

優れた温度分布と復帰性能

従来、大型のCO₂インキュベーターはそのチャンバーサイズの巨大さから、温度分布やドア開閉時の復帰性能、加湿によるチャンバー内の余剰な結露など、様々な課題を抱えてきました。
「大型でありながらもミドルサイズに匹敵する性能と品質を実現する」
弊社はNP870の開発ステージにおいて、性能面で妥協しないことをテーマに取り組みました。様々な試行錯誤の結果、独自のエアー循環システムとヒーター制御技術を完熟させ、クラス最高の性能を実現することができました。

CellSTACK/Cell Factoryを用いた細胞製造

接着性細胞の大量培養の有効手段として、CellSTACK(Corning社)やCell Factory(ThermoFisher Scientific社)といった多段型培養容器(スタックプレート)の需要が高まっています。10段容器(CF10/CS10)の場合、培養培地を含む容器の重量は5kg程度にもなります。
NP870の専用トレイには、このような10段容器を6個載せることができます。トレイは最大30kg以上にもなる荷重にもたわむことのない、堅牢性と平坦性を保証する堅牢な設計です。
また独自の温度制御・エアー循環方式により、培養容器を満載した状態でも、無負荷状態と遜色のない温度分布・復帰性能を実現します。

 

コンタミネーションコントロール

CO₂インキュベーターの最大の悩みはカビや雑菌の繁殖、コンタミネーションです。どれだけ留意したとしても、設置環境からの持ち込みは避けえない問題です。NP870にはチャンバー内の循環雰囲気を清浄化する、特製のHEPAフィルターを標準搭載しています。従来と異なるPTFE(フッ素系樹脂)を用いたこのフィルターは、低圧損で高湿度にも耐えうる(疎水性)性能を持っています。チャンバー内の雰囲気は、ドア開閉後わずか15分で安全キャビネットやクリーンベンチと同等の、ISOクラス5(クラス100)清浄度に到達します。
また弊社が開発したWATERBAGを用いることで、加湿水の交換作業を容易にするとともに、加湿水のカビや雑菌を拡散させない、クリーンな運用が可能になりました。


HEPAフィルター(左)とWATERBAG(右)

 

大容量だからできる、優れた拡張性

多様な細胞製造の要求に応えるためには、様々な培養手法に応じた用途転換に対応できる柔軟性が求められます。NP870はその大容量を活かし、チャンバー内でマグネチックスターラーやシェーカー、回転培養装置を収納して使用できます。本体の両側面には、電源ケーブルやセンサー類を導入できる大型のアクセスポートが用意されています。

バリデーションコストの削減に貢献

研究用途と異なり、製造目的での運用ではコスト、とりわけランニングコストが重要視されます。製造従事者の一つの懸念材料は導入時のIQ(据付時適格性評価)やOQ(運転時適格性評価)や、年間の通しての保守点検、年次バリデーションにかかる経費ではないでしょうか。
NP870はミドルサイズ5台分の培養キャパシティがあります。一般的な運用であれば毎年5台分の費用がかかるところ、1台分のみ、つまり管理経費を1/5に削減することができます。

 

クリーンルームのスペースを有効に活用

多くの細胞加工施設(CPC/CPF)では、実際に細胞加工操作を行う調整室はグレードBクリーンルームであることが多く、そのスペースは限定的です。その中でCO₂インキュベーターや安全キャビネットなど、機器類が占める面積は小さくありません。NP870はその設置面積は一般的なミドルサイズの約1.5倍程度。ミドルサイズ製品を2段積みした例と比較しても、その優位性は明らかです。

 

製造現場のための、製造機器としてのCO₂インキュベーター

NeXCellというブランドには、Next(次世代)とCell(細胞)を繋ぐ架け橋となり、発展していくプラットフォームでありたい、という想いが込められました。
これからの未来、人類にとって再生医療や細胞治療が新しい「医療」として確立するためには、高品質で安定、かつリーズナブルな製造環境の整備が不可欠です。NP870の「P」はProduction、製造機器としての頭文字を冠した型番が付けられました。
研究機器としてだけでなく、製造に課せられた使命を遂行するために、弊社は今後も高品質な製品をお届けするとともに、精一杯サポートして参ります。


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