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除染剤としての過酢酸のすゝめ

序文

研究室やCPCにおいて、コンタミネーションの回避や、無菌での製造を行うためには、定期的に実験装置内や室内の清掃・除染を行い微生物コントロールを厳密に行う必要があります。
除染の方法は、旧来使用されてきたホルマリン燻蒸や二酸化塩素ガス除染などがありますが、当社は安全かつ高い有効性を有する過酢酸による除染をおすすめしております。
本ページでは、旧来使用されてきたホルマリン燻蒸の代替法として候補に挙げられる過酢酸除染と過酸化水素除染を比較し、過酢酸除染の優位性をお示しいたします。(しかし、バイオハザード対策用キャビネットの検査時の除染に関しては、一般的にホルマリン燻蒸や二酸化塩素ガス除染になります。)

過酢酸と過酸化水素

過酢酸

芽胞菌を含むほぼ全ての微生物・ウイルスに有効です。主にドライフォグ噴霧による除染に用いられます。過酢酸は、化学式CH3COOOHで表され、通常、酢酸、過酸化水素、過酢酸の平衡混合物として存在しています。(下記)
過酢酸製剤(アクトリル)は、過酸化水素の含有量は0.80%と低く、劇物には該当しません。

過酢酸が酢酸へ分解する際に発生するO2-ラジカルにより、芽胞菌を含む幅広い微生物を障害します。ラジカルを発生した後、酢酸、水、酸素の、人体に無毒な物質へと分解されます。

過酸化水素

芽胞菌を含むほぼ全ての微生物・ウイルスに有効です。過酸化水素ガス除染、過酸化水素ガスプラズマ滅菌が用いられています。6%以上の過酸化水素は劇物に指定される物質です。通常ガス噴霧に使用される過酸化水素は6%以上のため、取扱いには注意が必要です。過酸化水素は、分解により、ヒドキシラジカルを生じます。

H2O2 → H2O + ・OH

このヒドロキシラジカルが微生物を障害し、除染剤としての効果を発揮します。

過酢酸ドライフォグ除染と過酸化水素ガス・ガスプラズマ除染の比較

比較項目 過酢酸ドライフォグ除染 過酸化水素ガス
ガスプラズマ除染
ホルマリン燻蒸
安全性
劇物指定(6%以上)
×
発がん性
有効性
(耐性菌報告あり)
残留毒性 なし なし あり
腐蝕性
後処理 排気・拭き取り 中和・拭き取り 中和・排気・拭き取り
その他のメリット 非劇物 除染時間が比較的短時間 腐蝕性が低い
安価
その他のデメリット 消毒後の酢酸様のにおい
除染時間が長い*
金属腐食性
劇物に該当
金属腐蝕性
高濃度過酸化水素は生体に有害
発がん性
除染時間が長い
残留性

*サイクル除染の場合は比較的短時間で完了します。

PBioアクトリル

PBioアクトリルは過酢酸系の除菌剤です。
EPA(米国環境保護庁)により低温除菌剤として許可され(Reg.No.52252-7)、FDA(米国食品意訳局)により透析装置、透析液ライン等、医療用具の除菌消毒のための使用が認められています。ヨーロッパではCEマークを取得しており、厳しい基準で常に一定の品質が保証されています。欧米の製薬企業を中心に20年以上の使用実績を持っています。
また、劇物に指定されておらず(過酸化水素濃度:0.8%)、人体に対しては高い安全性を有しています。環境毒性試験においては、吸入毒性や皮膚毒性も認められていません。残留毒性もなく、その安全性から、FDAにより医療用具の除菌・消毒剤として認可されています。
希釈調整の必要もなく、そのままの状態でお使いいただける製品です。ステンレスに対する腐食性は無く、一般的な実験室の材質にお使いいただけます。ノズルをセットして対象物に噴霧し、ガーゼ等で拭き取るような使い方もできますが、下記に記した過酢酸除染装置と一緒に用いることで、より効果的に空間除染を行うことができます。

過酢酸除染装置のすゝめ

FOGACT:過酢酸除染バリデーション装置

 

PBioアクトリルを中心粒子径6μmのドライフォグにして噴霧する装置です。
環境を濡らすことが無く、拭き取りなどの後処理の手間が無く、二次汚染の心配がありません。
また、小型かつ軽量のため、手軽に持ち運ぶことが可能で、インキュベーターやセフティキャビネット内の除染に使用することが可能です。バイオロジカルインキュベーターを設置することで除染バリデーションを行うことも可能です。

FOGACTの使用例

CO2インキュベーター、セフティキャビネット、遠心機チャンバー、パスボックスなどの除染にご使用いただけます。

SDmini:過酢酸サイクル除染装置

アクトリルを使用して、過酢酸サイクル除染を行う装置です。過酢酸サイクル除染は、ドライフォグ*化した過酢酸を空間に噴霧しつつ、分解されて除染効果のなくなった酢酸を含むガスを回収し、新たな過酢酸を噴霧するサイクルを細かく繰り返して除染を行います。これにより、過酢酸の金属腐食性や、効果の持続性、酢酸臭の問題をクリアし安全性と能力を最大限に発揮することが可能です。
ドライフォグは基本的に環境を濡らすことはありませんが、高湿度では結露が発生する可能性があります。過酢酸サイクル除染は噴霧と除湿を細かく繰り返すことにより、機器を濡らさないため、パソコンや実験機器の養生も不要です。
付属のスマートフォンにより、遠隔操作が可能な他、除染終了後のログファイル送信なども可能です。バイオロジカルインジケーターを庫内に設置して培養試験を行うことにより、除染効果のバリデーションを行うことが可能です。

*ドライフォグ:平均粒子径の小さな霧。粒子径が非常に小さいため、物体に触れても粒子が潰れず、濡れが発生しません。(高湿環境においては結露する可能性があります)

SDmini使用例

SDminiは小型・軽量の装置です。CO2インキュベーターや安全キャビネット、アイソレーターなどの除染にご使用いただけます。

SDminiの金属腐食性

高湿度の日本では、たとえドライフォグであっても結露する可能性があります。SDminiによるサイクル除染では、薬剤回収と噴霧を細かく繰り返すことにより、低湿度での除染が可能です。
そのため、過酢酸除染による金属腐食や臭気の問題を解決しています。
右図は、上からサイクル除染、ドライフォグ除染、市販品スプレーについて、使用1時間後の写真です。サイクル除染を行った場合、金属腐蝕性が見られないことがわかります。

MINNCARE ドライフォグシステム

過酢酸系除染剤MINNCARE(ミンケア)は、過酸化水素濃度が22%のため、劇物扱いとなります。EPA(米国環境保護庁)にSterilantという最も除菌効果のあるカテゴリーで認定されています(Reg.No.52252-4)。ホルムアルデヒドと比較し、低残留、低毒性ながら高い効果を示します。また、原液を十分に希釈した場合(過酸化水素濃度6%未満)は、劇物に該当せず、安全な取扱いが可能です。
ドライフォグシステムを使用し、希釈したミンケアを室内に噴霧することで空間除染が可能です。ホルマリン燻蒸と比較し、短時間で終了(5~7時間)することや、有害性が極めて低いことから、製薬や化粧品などの衛生管理が求められる施設の空間除染に広く使用されています。