アプリケーションノート自動ライブセルイメージングシステム
スフェロイド細胞毒性のリアルタイムモニタリングによる薬剤応答性評価
Celloger Proを使用
細胞培養システムはバイオメディカル分野の研究において必須となっています。この分野では、コスト効率の良さや扱いやすさから、主に2D培養が行われています。しかし、2D培養には、細胞-細胞間、細胞-マトリックス間の相互作用や組織特異的な構造が失われているといった制限があり、がんのような疾病モデルにおいては、in vivoの状態を作り出すことが困難となっています1。そのため、より現実的なモデルとして、複雑なin vivoの状態を作り出すことができる3D培養システムへの関心が高まっています。これらの3D培養システムは、腫瘍微小環境における細胞毒性、薬剤耐性、細胞応答など、重要な要素をモニタリングする上で大きな可能性を秘めています2, 3。さらに、これら3D培養システムは、医薬品の安全性や有効性評価を大きく進歩させ、初期段階での創薬や開発を促進しています4。
以下の実験では、GFPを標識したHEK293細胞(HEK293-GFP細胞)の3Dスフェロイドを用いた抗がん剤(スタウロスポリン)の有効性評価における、最先端のライブセルイメージングシステムCelloger Proの有用性をお示しします。本アプリケーションノートでは、Celloger Proによって得られた包括的な結果を示し、Celloger Proが3Dモデルにおける薬剤に対する細胞の応答を動的に捉え、定量化できることを証明します。
スフェロイド構造の形成を促す96ウェルcell floater plate(SPL, 34896)に、10,000 cells/ウェルの濃度でHEK293-GFPを播種しました。オーバーナイトでインキュベートした後、0µM(コントロール)、0.1µM、1µM濃度のスタウロスポリン(以下、SSPと略す)で処理しました。さらに、死細胞を選択的に染色する赤色蛍光マーカーEthD-1(4µM, Sigma, 46043)で処理しました。次に、Celloger Proを使用してリアルタイムイメージングを行いました。イメージングは2×レンズを使用し、30分間隔で24時間画像を取得しました。
HEK293-GFPスフェロイドの抗がん剤SSPに対する薬剤応答性を調べるため、明視野および緑色蛍光にてスフェロイドのサイズ減少をリアルタイムに観察しました。同時に、赤色蛍光強度により、各時間の細胞死を評価しました。この結果、SSPの濃度上昇に伴って、相関的に赤色蛍光の強度が増加しました。これは細胞死が起こっていることを示しています。この傾向は、時間経過により、さらに顕著となりました(図1A)。Celloger Proのanalysisソフトウェアを使用して赤色蛍光の強度(Relative red Fluorescence intensity)を定量化し、グラフで表示しました(図1D)。これにより、薬剤誘導性細胞死に対するスフェロイドの応答性について、豊富な情報が得られました。
さらに細胞死の進行とスフェロイドのサイズ減少は相関しており、緑色蛍光画像により裏付けることができました。赤色蛍光画像と緑色蛍光画像をマージすると、スフェロイドのサイズ減少と赤色蛍光強度の間に明らかな相関性があることがわかりました。また、細胞の生存能力に対する薬剤の影響について直接可視化することができました(図1A)。さらに、スフェロイドのサイズ減少が、SSPによって引き起こされたことを確認するため、Celloger Pro analysisソフトウェアを用いて、スフェロイドの直径を正確に測定しました(図1B)。グラフ表示により、スフェロイドのサイズを定量化・視覚化し、観察された変化を明確で包括的に表しました(図1C)。これらの結果は、Celloger Proを使用すれば、三次元(3D)の細胞構造内で起こるダイナミックな変化について、リアルタイムに情報を得られるということに他なりません。
この結果は、Celloger Proが細胞で起こる複雑な現象を研究する上で有用であることを示しました。Celloger ProはSSP処理下の3Dスフェロイドのサイズ減少をダイナミックに捉え、細胞死マーカーに対する蛍光強度を定量化することにより、定性的・定量的なライブセルイメージングに不可欠なツールであることが分かりました。3Dスフェロイド培養とCelloger Proのリアルタイムイメージング能力の組み合わせは、薬効評価に革命をもたらす可能性および初期段階の創薬の進歩に貢献する可能性を明示しています。研究者は、これらの特徴を三次元(3D)環境下での薬物処理に対する細胞のわずかな反応の解明に利用することができ、抗がん研究やその他の研究において、より深い洞察が得られ、加速的な進歩につながります。
翻訳・文責:ワケンビーテック株式会社 企画推進部
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