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Application:細胞療法 Cell Therapy

はじめに

細胞療法は急速に成長を続ける有望な分野であり、疾患組織や臓器の再生から、特定の免疫細胞を用いた抗がん治療に至るまで、幅広い領域に新しい治療法をもたらすと期待されています。さまざまな種類の細胞を細胞療法へ用いることが検討されており、それらの細胞は自家由来と同種他家由来の両方のソースから採取することができます。細胞の種類によってそれぞれ特有の難しい点があり、規制された医薬品として人に使用できるだけの十分な質をもった生細胞を調製する必要があることから、細胞の種類ごとに、採取、保存、増殖そして加工についての特殊なプロトコールが必要です。
細胞療法の手順に普遍的で非常に重要となるステップは生細胞の凍結保存であり、細胞を治療に使用するためには、温度制御下での短期保存であるか、または長期冷凍保存であるかに関係なく、生存率と重要な生体機能のどちらもが維持されなければなりません。
細胞の加工および生産においては、その加工途中でも、製品となった後の移動の途中であっても、特定の温度で一定時間保持するために必要となるステップがいくつか存在します。細胞製品の加工中には、ドナー検査のための生体液サンプルや細胞の特性評価のためのPCRサンプルなど、細胞以外の温度感受性の高いサンプルもしばしば採取されます。従って、温度制御下におけるプロセスのための柔軟で使いやすく標準化されたシステムが、細胞療法においては必須となります[1, 2]。

 

細胞療法の流れ

 

Process 細胞/組織の採取
(血液、骨髄または脂肪など)
細胞の単離
(組織の酵素消化または細胞の精製・濃縮)
生産プロセス
(目的の細胞数になるまで細胞増殖)
最終産物の調製
(医薬品として投与できるように包装)
Steps ドナーからの生体サンプルの採取、およびその保存 出発細胞(初代細胞)集団のバックアップサンプルの凍結保存 PCRやFACSなどで細胞の種類・純度を調べるなど、細胞の特性検査の温度制御下におけるサンプルの採取 PCRやFACSなどの細胞加工中の検査のための、温度制御下におけるサンプルの採取 生産プロセス終了時の細胞の凍結保存:各患者由来の産物は自家細胞製品として使用するか、同種細胞製品として細胞バンク構築に用いる 最終特性検査のための温度制御下におけるサンプルの採取
biocision Products CoolRack L : 血液チューブ、15 mL チューブ用

XT Starter / CoolBox XT : 氷を使用せず材料の冷却・移動・加工

CoolRack CFT30 : 凍結保存用チューブ用

CoolRack SV10 : バイアル用

XT Starter / CoolBox XT :セフティキャビネット内で氷を使用せず冷却

CoolCell : 1℃/minレートでの細胞凍結

CoolRack PCR : 96/384 PCRプレート用

XT Starter / CoolBox XT : 氷を使用せず冷却

CoolRack PCR : 96/384 PCRプレート用

XT Starter / CoolBox XT : 氷を使用せずプレートを冷却

CoolRack CFT30 : クライオチューブ用

CoolRack SV10 : バイアル用

XT Starter / CoolBox XT: セフティキャビネット内で氷を使用せず材料を冷却

CoolCell : 1℃/minレートでの細胞凍結

CoolRack PCR : 96/384 PCRプレート用

XT Starter / CoolBox XT : 氷を使用せず冷却

CoolRack PCR : 6/384 PCRプレート用

XT Starter / CoolBox XT : 氷を使用せず冷却

 

細胞の保存

細胞加工製品の生産において、細胞の凍結保存は重要で難しいステップです。細胞療法製品のために生存能のあるサンプルを保存することには、多くの目的があります。

  • 細胞の加工に先立ち、最初にバックアップ用の細胞サンプルを採取し、保存するため
  • マスターセルバンク、ワーキングセルバンクを構築するため
  • 増殖プロセス時に、プロセス中コントロールサンプルおよびバックアップ細胞サンプルを確保するため
  • 加工の最後に、同種細胞製品の大規模バンクを構築し、幅広い集団への長期供給を可能とするため、または、患者各自に特異的な製品を保存し、いつでも投与できるようにするため

細胞の保存ステップは、プロセスのどこに組み込まれているかに関わらず、標準的ないくつかの要件を満たしている必要があります。

  • 簡便で実行しやすく、確かな再現性があること
  • 初期の実験室環境から、クリーンルーム内での制御されたcGMP環境へ簡単に移行できること
  • 初期開発の段階から、臨床および商業的な使用の段階にまで、規模の拡大が可能であること

BioCisionの製品群は、制御された一定の温度でと高い再現性をもって、すべての細胞保存プロセスをサポートします。そのポートフォリオはさまざまな種類の細胞に適合し、プロセスが簡単か複雑であるかに関わらず、cGMPプロセスなどのいかなる生産プロセスへも柔軟に適応します。

作業の流れ

 

1.サンプルの調製

凍結保存のために細胞を調製する際の温度制御は、その後の細胞の生存と回収率にとって非常に重要な要素です。 しかしながら、氷を使用した温度制御は、面倒で一定しないことが多く、クリーンルームでの使用には適しません。 アイスフリーシステムであるCoolBoxは、氷や電気または電池を必要とすることなく、信頼性のあるサンプル冷却(0.5~4℃)を最大16時間行うことが可能です。このシステムは、実験室やcGMP環境およびクリーンルームでの使用に非常に適しています。

2.凍結速度制御下での凍結

CoolCell アルコールフリー細胞凍結コンテナーは、アルコールやプログラムフリーザーなどの高価な専用設備を必要とせず、制御した速度で凍結可能なことが実証されています。CoolCellのサイズ展開は幅広く、自家および同種細胞療法のどちらの目的にも使用可能で、ほとんどの細胞種に応用することができます。細胞療法のプロセスには、マスターセルバンク、ワーキングセルバンク、最終細胞治療製品の生成など、細胞の凍結が必要となるステップがいくつかあります。

アルコールフリー

クリーンルーム環境での作業時には、液体類やガスの供給と廃棄が常に難しい問題となります。従来の細胞凍結容器では、イソプロパノールを最初に充填し、それを頻繁に入れ替える必要があります。しかし、CoolCellはアルコールを必要としないため、クリーンルームに液体を持ち込んだり、アルコールの交換を追跡記録する必要がなく、厄介な廃棄物処分やランニングコストも発生しません。一方、プログラムフリーザーは液体窒素を通常使用し、継続してLN2を供給する必要があることから、クリーンルーム内での使用は必ずしも有効でない、あるいは現実的ではありません。さらに、この複雑な設備は、定期的な管理や点検、あるいはcGMP標準に基づいた校正を行わなければなりません。

容量柔軟性

標準サイズのCoolCell LXは、1個に1~2 mLのクライオチューブを最大12本収納することができます。大きいサイズのCoolCell FTS30は、1個に最大30本のチューブが収納できます。CoolCell SVは血清チューブや無菌バイアル用、CoolCell 5ml LXは5 mLクライオチューブ用です。CoolCellファミリーの細胞凍結コンテナーは、初期の開発期から細胞療法の臨床試験に至るまで、治療用の自家または同種細胞製品の容量の容器に理想的なサイズを展開しています。
また、CoolCellを使用することにより、各患者由来の産物(自家細胞医薬品)を別々の容器に凍結保存でき、他の患者由来の産物から分離できるようになるため、相互汚染のリスクが低減します。
同種細胞療法用の細胞製品においては、標準サイズ以上の大きさのCoolCellであれば、1個につき1 ~2 mLのクライオチューブを30本まで、5 mLチューブを12本まで収納することができます。したがって、CoolCell 1個には、最大60 mLの凍結容量を収容できることになります。大きなバッチをより大規模に加工する場合、または連続して加工する場合は、複数のCoolCellを並行して用いることもできます

3.在庫/冷凍移動管理

凍結処理後、ほとんどのサンプルは-80°Cフリーザーから液体窒素容器に移動する必要があります。移動の際の一時的な温度上昇は、凍結サンプルの生存率、機能性あるいは有効性に影響を及ぼすため、最低限におさえなければなりません。 したがって移動中に厳格な温度制御を保つことは非常に重要です。製品によっては、ダウンストリームの加工の前に複数回の移動が必要なものもあり、各移動には注意が必要です。前述のCoolBoxCoolCellおよびBioT ULT Transporterはすべて、施設内低温移動管理に適した、理想的な製品です。 より大規模なサンプル群の加工と移動には、ULT Transporterが適しており、移動可能な開放型プラットフォームである超低温の作業エリアを実現します。これらのシステムは、-80℃に制御された環境でサンプルの加工、パッキングおよび移動が確実に行われるように設計され、同時にユーザーには究極の柔軟性を提供します。
 

4.融解

ウォーターバスでの凍結融解には、融解過程において温度が一定でないことがあるだけでなく、かなり高い汚染のリスクが伴います。クライオチューブの場合は熱伝導性のCoolRack CFTを、血清チューブやバイアルの場合はCoolRack SV10ThermalTrayの表面にのせることで、これらのラックを水面上にありながら目的の温度に保つことができます。この制御された方法により、均一で再現性の良い融解プロセスが、最小限の汚染リスクで達成できるのです。
コンタミネーションの可能性や主観による処理といった不確実な凍結融解手法の代替案として、ThawSTAR 凍結細胞融解ステーションは有用です。高速で確実、再現性のある凍結融解処理を実現します。処理は簡単、凍結チューブをセットし待つだけです。音とイルミネーションにより融解状況を確認することができます。融解が完了すると、チューブは優しくポップアップしますので、簡単に取出し次の手順へと移ることができます。細胞と生体試料の凍結融解に理想の環境を提供します。
*2018年7月現在、ThawSTARはAstero Bio社の製品です。
 

細胞医薬品関係におけるBiocision製品の長所

 

1. 氷やアルコールを用いず、実験ベンチからクリーンルームへ簡単に移行できる

細胞医薬品開発においては、一般環境の実験室のベンチから、臨床グレードの製品を実際に調製するためのクリーンルームへの移行がしばしば大きな問題となります。クリーンルーム環境には、あらゆる汚染のリスクを最小限にするために厳しい基準が求められます。開発初期には深く考えることもなかった冷却のために氷、液体またはガスを用いるなどの単純なステップが、クリーンルーム環境では重要な問題となるのです。BioCisionが提供する幅広い製品群は、実験室での使用と同じくらい簡単にクリーンルームでも使用することができます。BioCision製品を用いることにより、サンプル調製時の氷や、サンプルの凍結時のアルコールや高価な専用設備が除去されることから、プロセスをまったく変更することなく、クリーンルームへの移行が簡単に達成できます。

2. 制御下での加工

BioCisionの保存・凍結デバイスにより、温度制御(検証済)が長期間可能となり、その結果、加工操作は安定して再現性のあるものになります。CoolCell細胞凍結コンテナーは、–80℃フリーザーに入れることで、各サンプルにおける凍結速度を–1℃/分に制御します。CoolCellはイソプロパノールなどのいかなる液体も必要としません。容器の設計と材料によって熱除去が制御され、均一かつ高い再現性をもって、すべてのチューブを凍結します(図1)。
CoolCell アルコールフリー細胞凍結コンテナーはヒト細胞を-80°Cに凍結するのに最適な容器です。Roslin Cellabが行った第三者機関による試験で、CoolCellを使用した場合、他の手法と比較して、融解3日後のhESCの生存細胞数が33%増えたことが示されました(P<0.005)(図2)。

図1. CoolCellの一貫性。-80°Cフリーザー中で凍結処理を連続して5回行ったところ、再現性のある凍結プロファイルが示された。 図2. LN2中に2週間保存後、各方法で凍結処理したhESCsを3本のチューブごとに融解し、細胞数をその後すぐ(Day 1)と増殖後3日目(Day 3)に測定した。CoolCellを使用した場合、3日間後の生存細胞数が33%増加したことが示された。
3. 柔軟かつ商業的レベルへの大規模化が可能

すべてのBioCision製品は、より大きな容量のデバイスを選ぶか、または複数のデバイスを並行して用いることで簡単に規模を大きくすることが可能です。小規模な自家細胞製品から、より大規模な同種細胞製品まで、とりわけ複数のステップを経て加工される場合、このアプローチをもとに柔軟な工程が設計できます。 同種細胞製品については、最初の大規模なマスター細胞バンクの構築から、ワーキングバンクまたは個々の製品段階でのより小規模加工など、異なったスケールの加工を行うこともあるでしょう。BioCision製品は、すべての加工段階における至適容量に対応するように、システムを追加的に組み合わせて使用することができます。
CoolCellを用いることにより、プログラムフリーザーなどの専用設備がすでに他の工程に使われているかどうかを気にせずに、細胞が凍結できる状態になったらいつでも凍結保存サイクルを開始することができます。プログラムフリーザーには休止時間があるため、一日に1~2回しか使用できず、供給に大きな問題を生じる可能性がありますが、CoolCellにはこのようなタイムロスは全くありません。
他の凍結法とは異なり、CoolCellを用いた工程をスケールアップする場合には、手頃な値段の同ユニットをいくつか新規購入するだけでよく、高価な設備購入と、継続的な管理スケジュールに伴う設備投資は不要です。

参考文献

1. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2781093/
2. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3088734/