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液体窒素取り扱い時に必携!
液体窒素取り扱いの手引き(作業編)公開中!!

本資料について
本資料は液体窒素の取り扱い方法について、実際の作業上で注意すべき点を簡潔にまとめたものです。
学生や新人への教育訓練用資料としてお使いいただけるほか、熟練の方も知識の見直しとしてご活用いただけます。
本ページ下部では、液体窒素容器に引っ掛けてお使いいただける簡易ガイドも紹介しております。
簡易ガイドは無償で配布しております。本ページ下部のボタンからご請求ください。
PDF版は、本ページ下部のリンクからダウンロードできます。
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液体窒素取り扱いの手引き(作業編) 第2版

目次
  1. 液体窒素と酸欠について
  2. 低温の危険性と保護具の使用
  3. 液体窒素保存容器取り扱いの注意
  4. 容器種別による注意
  5. 搬送時の注意

液体窒素と酸欠について

液体窒素は空気を液化精製して製造される液体状の窒素です。沸点が-196℃と極めて低く、専用容器での保管が必要です。無色透明、無臭で、窒素自体の比重も空気に近いため、気化した窒素が充満することによる酸欠のおそれがあります。凍傷、酸欠のリスクがありますので、取り扱いには十分な注意が必要です。

  1. 使用環境の注意
    • 液体窒素は気化すると体積が650~800倍に増加します。
    • 少量をこぼした場合でも室内に充満し、周囲の酸素濃度を低下させるおそれがあります。
    • 室内で使用する場合は換気扇を稼働させたり、窓や扉を開放して換気を十分に行いながら取り扱う必要があります。
    • 顔の近くに容器を置いて作業しないでください。
  2. 酸欠の症状

    酸欠状態になると、次の症状を感じます。

    • 頭痛
    • 吐き気
    • 酩酊感
    • 脱力感
    • 呼吸、脈拍数の増加

    これらの症状を感じたときはただちにその場を離れ、換気の良い場所へ移動してください。また、当該場所へ他者が近寄らないような措置を取ってください。

    具体的な酸素濃度と酸欠の症状に関しては下表を参照してください。

    酸素濃度 作用または毒性
    21% 通常大気中の酸素濃度
    18% 安全の限界濃度:換気が必要です
    16~12% 呼吸・脈拍数増加、集中力低下、頭痛、耳鳴り、吐き気、筋力低下
    14~9% 意識障害、頭痛、吐き気、チアノーゼ、脱力感
    10~6% 意識消失、昏倒、全身痙攣・死亡
    6%以下 意識不明、昏倒・呼吸停止、心停止・6分などの短時間で死亡
  3. 急速な酸欠のおそれがある場合

    急速に窒素濃度が上がった(酸素濃度が低下した)場合、息苦しさを感じる前に、一瞬で意識を失います。
    室内で液体窒素容器を転倒させて大量に液体窒素をこぼしたような場合は、ただちにその場を離れてください。
    また、近隣の扉や窓を開放して換気に努めるとともに、他者が近寄らないような措置をとってください。

  4. 二次災害の予防

    液体窒素を使用していた者が倒れていた場合、周囲の酸素濃度が低下している可能性があります。消防へ通報の上、二次災害を避けるため、近づかないようにします。救助を行う場合は、周囲の換気を十分に行い、酸素濃度が20%を超えたことを確認の上で実施してください。

  5. 酸欠状態の応急処置
    軽度の酸欠:
    換気の良い場所で安静にしておきます。症状が改善しない場合は病院で受診してください。
    意識不明(呼吸あり):
    救急へ通報し、倒れた者を換気の良い場所へ移動しておきます。
    呼吸停止:
    救急へ通報し、到着まで人工呼吸等の救命措置を行ってください。
参考1:労働安全衛生法
労働安全衛生法により、酸欠が起こりうる場所での作業は、酸欠防止の策としてガス検知器などで作業開始前に酸素濃度を測定するとされています。従って、液体窒素を使用する部屋に酸素濃度計が設置されていない場合は設置が必要です。
参考2:酸素濃度計と警報
施設によっては、酸素濃度計、警報機が設置されています。事前に各装置の設置場所や警報を確認しておくことが重要です。

(例:左から、警報ランプ、ガス検知機、酸素濃度計)

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低温の危険性と保護具の使用

  1. 手袋の選択(液体窒素を直接取り扱う場合)

    液体窒素を取り扱う際は、乾燥した専用の手袋を使用します。ただし、軍手など布製の手袋は使用してはいけません。特に濡れた軍手は危険です。液体窒素が付着すると、長時間の低温曝露につながる可能性があります。

  2. 手袋の選択(液体窒素を直接取り扱わない場合)

    液体窒素で冷却した金属等を扱う場合は軍手でも差し支えありません。ただし、液体窒素配管等の作業を行う場合、配管の破損により液体窒素が漏れ出る可能性もありますので、専用手袋や革手袋を使用してください。

  3. 手袋のサイズ

    ぴったりとフィットするものは避けてください。緊急の場合、すぐに脱げるよう、少し大きめのサイズを着用するようにします。

  4. 足元の注意

    液体窒素が足にこぼれる場合を想定し、足元にも注意が必要です。スリッパやサンダルでは液体窒素が直接触れる可能性があります。また靴下に液体窒素が浸入すると長時間曝露に繋がる可能性があります。なるべく液体が浸入しない履物を使用してください。

  5. フェイスガード(ゴーグル)の着用

    液体窒素が飛散するおそれがある場合はフェイスガード(ゴーグル)を着用して操作を行ってください。液体窒素が目に入った場合、失明に至るおそれがあります。

  6. 液体窒素曝露時の対処

    衣服の上から液体窒素が付着した場合は、ただちに衣服を皮膚から離してください。衣服が皮膚に固着した場合は、無理に引き剥がそうとせず、流水等で温めてゆっくりと引き離してください。目に入った場合はただちに病院で受診してください。

  7. 凍傷について

    液体窒素に曝露した場合、凍傷になる可能性があります。取り扱いの際は、前述の手袋など必ず保護具を使用してください。万が一凍傷になった場合や凍傷の疑いがある場合はすぐに病院で受診してください。すぐに病院で受診できない場合に限り次の応急処置を行ってください。

  8. 凍傷の応急処置

    液体窒素に曝露して凍傷を起こした場合、患部の色が赤<紫<黒の順に重篤度が高くなります。原則としてすぐに病院(主に外科、皮膚科)で受診してください。すぐに病院へ行けない場合のみ、応急処置として次の対応をとってください。

    【処置方法】
    • 40℃前後のお湯に浸けて患部を加温する。
    • お湯が無い場合、布で包む、他の皮膚に当てるなどして患部を加温する。
    • 重度の凍傷の場合、初めは冷水で加温する。
    • 加温による痛みがひどい場合は鎮痛剤を服用する。(感覚が戻り、痛みが出る場合があります)
    • 水ぶくれがある場合はガーゼなどで保護する。
    【してはいけないこと】
    • 患部を高温(熱湯など)で加温すること。火傷の可能性があります。感覚が無い場合は熱さを感じないため、湯を使用して加温する場合は温度に十分注意してください。
    • 患部をマッサージしたり、こすったりすること。症状が悪化します。

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液体窒素保存容器取り扱い時の注意

  1. 密閉しない

    液体窒素を入れる容器は密閉しないでください。密閉状態にした場合、液体窒素の蒸発によって内圧が上昇し、爆発する危険性があります。容器口やふたの周囲に水分があると、この水分が凍結することで意図せず密閉状態が作られる場合があります。水が直接かかるような場所(屋外)や、湿気の多い場所に液体窒素の入った容器を置いてはいけません。

  2. 専用容器の使用

    極低温下で割れやすくなる金属もあります。ガラス製容器の使用は厳禁です。保管、運搬などは必ず専用容器を使用してください。

  3. 転倒に注意

    容器は平らな面に設置して使用してください。不安定なまま使用し、転倒させた場合、容器破損のほか、液体窒素が体にかかる危険性や、漏出した液体窒素の蒸発による窒息の危険性があります。

  4. ふたの紛失

    ふたを紛失した場合、開放したままにしないでください。完全に乾燥した布などをかぶせておきます。開放したままにしておくと、液面で酸素が液化し、液体酸素が混入することがあります。液体酸素は助燃性が強く、有機物と接触することで爆発的な反応を起こすおそれがあります。開放状態後に使用する際、液色が青みを帯びていれば液体酸素が混入している可能性があります。

  5. 長期保存、追加充填について

    長期保存や追加充填を続けていると、液面と酸素の接触機会が増加し、液体酸素が混入する可能性が高くなります。長期保存した液体窒素についても、残液の色を確認し、青みを帯びている場合は取り扱いに十分注意してください。

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容器種別による注意

  1. 開放型容器

    開放型容器はふたが密閉しない容器で、基本的には真空断熱層を有する二重構造です。比較的小型で運搬が容易ですが、ふたが密閉されていないので転倒すると液体窒素が漏出します。
    構造上、横揺れに弱く、衝撃などで内壁が破損すると真空断熱層が破たんします。真空断熱層が破たんした場合、断熱効果が低下し、内圧の上昇や液体窒素蒸発量増加のおそれがあります。また、容器の外壁に結露が起こったり、霜が付きます。
    転倒させた場合や衝撃を与えた場合は、その後の容器外面の変化に注意してください。
    これらの変化が見られた場合、その容器は使用してはいけません。
    細首のものは構造上、横に向けると首の部分が破損しやすいため、斜めにしてはいけません。液体窒素を取り出す場合は斜めにせず、専用のポンプなどを使用して液体窒素を取り出してください。

  2. 自加圧容器

    安全弁、汲み取り口などがある容器です。安全弁により内圧の上昇を抑えていますので、安全弁が正しく機能しているか、定期的に確認を行ってください。安全弁が正しく機能していないと、内圧上昇により爆発するおそれがあります。
    自加圧容器の汲み取り口から液が出ない場合、配管内で水分が凍結して液の流れを妨げている可能性があります。急な噴出の可能性があるため汲み取り口を覗き込むなどの行為は避けてください。この場合は容器の管理者に連絡するなどして対策をとってください。また自加圧容器は、高圧ガス保安法に基づいた容器再検査(経過年数20年未満の場合は5年毎、20年以上は2年毎)および、メーカー設定の日常点検の実施が必要です。自加圧容器を所有されている場合、検査期間が過ぎたものを誤って使用しないようご注意ください。

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搬送時の注意

  1. 手で運搬する場合
    • 液体窒素容器を手で持って運搬する場合、原則2名以上で垂直に持って運搬してください。(1名で容易に持ち運びできる小型・軽量のものは除く)。
    • 斜めにすると液体窒素が漏出する危険性や、容器破損のおそれがあります。
    • 内部の液体窒素が噴出する可能性がありますので、安全面の観点から、運搬時にも手袋を着用することを推奨します。
  2. 台車を使用する場合
    • 荒れた路面上やスロープでは、台車が転倒するおそれがあります。
    • 車輪の滑りが悪い場合にも、転倒のおそれがあります。
    • 転倒防止には、適切な路面・ルート、台車を選択するほか、ベルトやロープで容器を台車に固定するなどの対策が有効です。
    • 台車には車輪ロック付きのものを使用し、静置時にはロックをかけてください。
  3. エレベーターを使用する場合
    • 上下階への運搬は、原則として階段を使用します。
    • やむを得ずエレベーターを使用する場合は、容器のみをエレベーターへ搬入し、搬入者は同乗してはいけません。
    • エレベーターへの搬入者、目的階での搬出者など、2名以上で協力して行ってください。
    • 途中階で人が乗って来ないよう、液体窒素運搬中である旨をわかるようにしてください。
    • やむを得ず同乗した場合、停電等でエレベーターが停止しても、容器が転倒しない限り窒息の危険性はほぼありません。落ち着いて対応してください。
  4. 車を使用する場合
  5. 車による運搬は行わないことが望ましいですが、やむを得ず車内に液体窒素容器を積載して運搬する場合は、容器が転倒しないようベルトなどでしっかりと固定し、また必ず窓を全開にした状態で行ってください。

注記:運搬時、振動によって突沸し、液体窒素が噴出するおそれがあります。特に満充填の状態では噴出しやすくなります。顔や体はなるべく容器口から遠ざけるようにして運搬してください。

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参考資料
  • 千葉大学理学部極低温室「液体窒素利用の手引き」
  • 大阪大学低温センター吹田分室「液体窒素取扱講習テキスト:液体窒素の取扱について」
  • 東北大学極低温科学センター「低温寒剤の取り扱いと危険防止」
  • 島根大学総合科学研究支援センター「寒剤取扱いの手引き2007」
  • 東京大学低温センター「低温センター安全講習会保安技術テキスト」
  • 理研計器株式会社「酸素モニター:OX-500」カタログ
編集 : ワケンビーテック株式会社・企画推進部
監修 : 小原有弘/国立開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所
JCRB細胞バンク(創薬資源研究プロジェクト)
協力 : 大陽日酸株式会社
今村酸素株式会社
(敬称略)

初版:2017年9月20日
第2版:2023年1月4日

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液体窒素容器に添付できる簡易ガイドもあります

取り扱い時の注意や、緊急時対応を1枚(B5サイズ表裏)にまとめた簡易ガイドも作成しています。

  • 簡易ガイド表

  • 簡易ガイド裏

  • 使用例

液体窒素保存容器に引っかけておけば、手軽に注意点や緊急時の対応を確認できます。
当簡易ガイドは無償で配布しております。
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※本資料は液体窒素の安全な使用にお役立ていただけるよう配布しているものです。
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