アプリケーションノート自動ライブセルイメージングシステム

Application Note:Celloger Nanoによる明視野・蛍光ライブセルイメージングを利用した細胞アッセイ

明視野・蛍光ライブセルイメージングを利用した細胞アッセイ

Celloger Nanoを使用

※ 英語版から日本語版への翻訳にあたり、一部の内容を省略しています。

タイムラプス顕微鏡を使用すれば、リアルタイムに生きた細胞の複雑な動態を観察することができます。こういったライブセルイメージング技術を利用することで、様々な生物学的な現象を知り、研究することが可能となります。細胞の遊走や発達、(免疫細胞などの)traffickingのような細胞の現象をリアルタイムにイメージングすることは、細胞生物学や神経科学、薬理学、発生生物学など様々な分野の研究において重要な意味を持ちます。生きた細胞を観察するために、顕微鏡にカバーをしてCO₂や温度、湿度を制御する場合があります(図1A)。しかし、気密性を維持することや大きな空間を完全にカバーすることは難しく、大抵の場合、細胞の成長に最適な温度や湿度をコントロールすることは困難です。これらの欠点を克服するため、インキュベーター内に設置できるコンパクトかつリーズナブルなイメージング装置も開発されています。そういった装置は、基本的には明視野観察機能を有しており、場合によっては、特定の波長で励起し、蛍光を発する蛍光色素を観察するために、蛍光観察機能が追加されます。
しかし、蛍光染色を利用したライブセルイメージングには限界があります。蛍光を明るくかつ鮮明にすると、画質の改善には繋がりますが、光毒性を引き起こすことにもなります。従って、タイムラプスイメージングシステムには、光の強度が低い状態であっても、効果的に蛍光イメージングができるという機能が必須となります。先に述べたとおり、インキュベーター内での蛍光イメージングのように、多くの熱を発生するような実験を行う場合、温度や湿度を維持しつつ画質を確保することが、ライブセルイメージングシステムにとっては重要なポイントとなります。
Curiosis社が開発したライブセルイメージングシステムCelloger Nanoはコンパクトサイズでインキュベーター内に設置でき(図1B)、装置自体の熱の発生に耐えられるようデザインされているため、長時間のイメージングを可能とします。また、コントラストが優れた光学系によって鮮明な明視野画像を取得できるほか、最適化された蛍光フィルター、光路により、最小限の光強度でリアルタイムにライブセル蛍光イメージングを行うことができます。細胞生物学や薬理学などの細胞を使用する様々な研究分野において、Celloger Nanoの有用性がテストされました。それらのテストの結果から、Celloger Nanoは同様の機能を持ったライブセルイメージングシステムよりも、さらに鮮明な明視野画像を得られるということが示されました。また、蛍光イメージング画像は同性能のcMOSカメラを搭載した蛍光顕微鏡で得られる画像と同等のレベルでした。

A. 一般的なライブセルイメージング用顕微鏡
B. インキュベーターに設置したCelloger Nano

図1. ライブセルイメージングシステム

1. 明視野イメージング
薬剤の開発において、薬剤スクリーニングは極めて重要かつ必須のプロセスです。薬剤スクリーニングを行う上で、薬剤の種類や濃度に合わせて処理実験を行う際、リアルタイムで細胞のモニタリングを行い、鮮明な画像を得ることが重要です。Cellogerの明視野イメージングは、一般的なライブセルイメージング装置よりもコントラストが良く、透明な細胞サンプルであっても、細胞の輪郭や境界をより鮮明に表示することができます(図2)。

A. Celloger Nanoで撮影した画像
B. 一般的なラブセルイメージング装置で取得した画像

図2. Hela細胞の明視野画像(スケールバー:200µm)

2. 蛍光イメージング
Celloger Nanoライブセルイメージングシステムおよび、細胞内小器官や細胞標識を特異的に染色するライブセル染色用の蛍光色素を用いることで、細胞内の変化を視覚的に調べることが可能となります。この特長を活かし、様々なメカニズムを介した薬剤の効果をモニタリングし、定量化することが可能です。Celloger Nanoに搭載された蛍光光学システムは、光源強度に対する検出蛍光の比率を高めるよう最適化することで、励起時に必然的に発生する光毒性を最小限に抑えながらも、高画質な蛍光画像を取得します。蛍光画像の画質を検証するため、Celloger Nanoで取得した蛍光画像と、ASI174MM(SONY IMX174 cMOSイメージセンサー, 性能はCelloger Nanoと同等)を装着した蛍光顕微鏡で撮影した画像を比較しました。Celloger Nanoで撮影したCMFDA(緑色細胞トラッキング色素)で染色したHela細胞の蛍光画像は、蛍光顕微鏡で撮影したものと蛍光強度は同等であり、細胞とバックグラウンドのコントラストも高く、鮮明でした(図3)。



図3. CMFDA染色した細胞の蛍光イメージング(スケールバー:200µm)

2.1. 細胞毒性アッセイ
細胞が死ぬ際に細胞膜が破壊され、細胞透過性が増加することを利用して細胞死の程度を測定する染色試薬があります。ノコダゾールによる細胞毒性を測定するため、死細胞を緑色蛍光色素CellTox™で染色しました。結果として、ノコダゾール処理後20時間後、細胞死による細胞透過性が増加するにつれ、蛍光により検出される細胞の数も増加することが確認されました(図4)。

A. 62.5nM ノコダゾール処理後35時間の細胞画像(スケールバー:200µm)
B. 蛍光カバー率の経時変化

図4. 細胞透過色素を利用した細胞毒性アッセイ

2.2. アポトーシスアッセイ

図5. Caspase-3/7緑色検出試薬の反応メカニズム

アポトーシスはプログラムされた細胞死のプロセスであり、その過程において細胞膜のブレブ形成、細胞の縮小、核の断片化などが起こります。このプロセスでは、カスパーゼと呼ばされる酵素が活性化され、反応を媒介します。カスパーゼファミリーの1つであるカスパーゼ3/7は、活性化されるとDEVDとして知られる特定のペプチドを切断します。DEVDに結合した蛍光色素がカスパーゼ活性やアポトーシスを定量化する上で有効なツールとなります(図5)。

カスパーゼを活性化し、アポトーシスを引き起こすことが知られている物質であるスタウロスポリンで処理すると、DEVDの切断が起こり、蛍光物質が放出され、蛍光が検出されました。蛍光物質の量は時間とともに増加しました(図6)。

*Celloger Nanoで撮影(30分間隔で15時間30分撮影)
図6. 活性化カスパーゼの蛍光検出によるスタウロスポリン誘導性アポトーシス(Hela細胞)の定量化(スケールバー:200µm)

蛍光カバー率のグラフは、時間経過によるアポトーシス変化量を示しています。このグラフからは、スタウロスポリン処理後2時間半後から蛍光が検出され始め、処理後10時間後に反応が飽和状態に達し、全ての細胞の蛍光を検出できたことが分かります(図7)。

図7. 蛍光カバー率の経時変化

2.3. トランスフェクション

*Celloger Nanoで撮影。2時間間隔で40時間撮影
図8. pCMV GFPプラスミド導入後のGFP発現タイムラプス画像(スケールバー:200µm)

トランスフェクションは、様々な研究や治療目的で実施されます。リアルタイム細胞イメージングは、トランスフェクション効率の測定や導入された遺伝子の効果をモニタリングするのによく利用されています。細胞にpCMV-GFPベクターを導入し、Celloger Nanoを用いて、GFP(緑色蛍光タンパク)から発せられる緑色蛍光を2時間間隔で観察したところ、トランスフェクション後4時間で緑色蛍光が観察され始め、トランスフェクション後16時間後まで強く維持されることが確認されました(図8)。

3. 結論

Celloger Nanoは、最小レベルの励起光から発する蛍光でのイメージングを可能にすることにより、蛍光イメージングの効率を向上させます。また、ライブセルイメージングで、考慮すべき点である蛍光染色による光毒性を抑えることもできます。
上記の全てのアプリケーションにおける実験では、Celloger Nanoは完全にインキュベーター内に設置した状態で使用されました。
Cellogerシステムは様々なイメージングアプリケーションや実験において理想的な装置と言えるでしょう。

4. 結論

  1. Jordan, M. A., Thrower, D., & Wilson, L. (1992). Effects of vinblastine, podophyllotoxin and nocodazole on mitotic spindles. Implications for the role of microtubule dynamics in mitosis.Journal of cell science,102(1), 401-416.
  2. Blajeski, A. L., Phan, V. A., Kottke, T. J., & Kaufmann, S. H. (2002). G 1 and G 2 cell-cycle arrest following microtubule depolymerization in human breast cancer cells.The Journal of clinical investigation,110 (1),91-99.

翻訳・文責:ワケンビーテック株式会社 企画推進部

本資料はワケンビーテック株式会社がCuriosis社の許諾を得て日本語訳したものです。Curiosis社および弊社の許諾なく複製、転載を行うことはお控えください。