アプリケーションノート特集記事

Application Note:ヒトiPS細胞由来心筋細胞の大容量での凍結と融解の実践


細胞加工製品、再生医療等製品の発展に伴い、今後の再生医療では、細胞培養工程のスケールアップが必須条件になっています。
しかし、スケールアップの開発では、細胞培養やその他の工程において、作業効率が落ちるのではないか?という懸念があります。
また、患者自身の細胞(自家細胞)を使用する場合、採取後の培養に時間がかかるため、すぐに治療に使用することができません。
そこで現在注目されているのが、ドナーから提供された細胞、つまり他家細胞(ES細胞、iPS細胞)の使用です。
ドナーから採取した細胞を事前に大量培養しておくことで、より早く治療に使用することができます。
今回、予備実験における未分化iPS細胞の凍結保存の成功を元にして、iPS細胞から分化した心筋細胞について、
治療で利用できるスケールでの凍結保存に関する検討を実施しました。
 

予備実験(前回までの報告)

  • 未分化iPS細胞(凍結保存液:STEM-CELLBANKER®)
  • 濃度5×10⁶cells/mL 液量:70mL
  • 凍結保存バッグ:ミルテニーバイオテク社クライオマックス凍結保存バッグ250mL
  • 凍結保存期間:1.5ヶ月
  •  

  • 解凍処理合計時間30分
    ※2mLバイアル(液量:1.5mL)×47本実施した場合、合計処理時間は90分

ThawSTAR CBでの解凍時の凍結保存バッグ

  • 解凍時生存率:95.5%
  • 解凍後の増殖率(播種細胞数:0.1×10⁶cells、4日間培養)
    250mLバッグ:2.55倍
    コントロール(2mLバイアル1本):2.49倍
    2mLバイアル47本分:1.85倍

凍結前細胞

47本バイアル

250mLバッグ

コントロール1本

結論

 大容量の凍結保存、解凍作業で、細胞への影響は非常に少なく、作業効率のUPが可能である。

 


 

実  験

本実験では、研究用iPS細胞を心筋細胞に分化し、
2回目の凍結実験を行い、評価しました。

  • 研究用iPS細胞を心筋細胞に分化
  • 心筋分化開始後15-17日目に細胞回収
  • 濃度:5×10⁶cells/mL、液量:20mL
  • 凍結保存バッグ:ミルテニーバイオテク社クライオマックス凍結保存バッグ50mL
    (2mL凍結バイアル(液量1.5mL)14本分)
  • 凍結保存期間:1-2週間(-150℃)

1

ラベル作成・貼付

2

凍結操作

3

凍結保存

4

解凍作業

5

解凍後培養

  • 処理時間と解凍後の生存率

 

*比較対象:2mLバイアル14本(液量21mL)

1

7.5分

2

6分

4

60分

▶合計:1時間以上 生存率:94%

 

*1回目50mLバッグ(液量20mL)

1

3.6分

2

3分

4

10分

▶合計:20分以内 生存率:91%

 

*2回目50mLバッグ(液量20mL)

1

3.6分

2

3分

4

10分

▶合計:20分以内 生存率:91.5%

 


 

5 培養後の評価

▶解凍接着培養

2日間培養

2mLバイアル14本

50mLバッグ1回目

50mLバッグ2回目

6日間培養

2mLバイアル14本

50mLバッグ1回目

50mLバッグ2回目

 50mLバッグ保存細胞は、14バイアルと同等の接着性を示した。差は見られなかった。

 


 

▶解凍接着培養6日後 拍動解析(SONY SI8000)

14vial

拍動数:32.3回/min

50mLBag

拍動数:31.4回/min

 50mLバッグ保存細胞は、14バイアルと同等の拍動を示した。差は見られなかった。

 


 

▶心筋球作製能力

凍結前

2mLバイアル14本

50mLバッグ1回目

50mLバッグ2回目

  50mL バッグ保存細胞は、14バイアルと同等の心筋球作製能力を示した。差は見られなかった。

【データ提供元:慶應義塾大学 医学部循環器内科 遠山 周吾 講師の研究グループ】

※上記製品は、クライオマックス凍結バッグを除き、全て研究用製品です。

製品に関するページは下記からご確認ください。

ThawSTAR CB

クライオマックス


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