製品紹介特集記事

ATTRAN(アトラン) 培養細胞シート用キャリア材料 日本再生医療学会資料のご紹介

ニッカン工業株式会社が2021年3月の第20回日本再生医療学会総会ポスター展示にて、銀座よしえクリニック、株式会社細胞技術応用研究所、聖マリアンナ医科大学と共同で、培養表皮を宅配便等で発送可能な輸送キットについて発表を行いました。本輸送キットには、同社が開発したATTRAN(アトラン) 培養細胞シート用キャリア材料が使用されています。
本ページでは、このポスター発表内容についてご紹介しています。

日経電子版・日経バイオテク掲載!

ATTRANに関する記事が、2021年3月19日の日経電子版、2021年7月日の日経バイオテクに掲載されました!

ニッカン工業、再生医療向け細胞シートの輸送キット(日経電子版)

ニッカン工業、「ATTRAN」の販売を強化(日経バイオテク)

細胞加工物の簡易輸送技術の開発 ~市中再生医療の普及へ

ATTRAN開発の背景

近年、細胞を利用することにより、失われた身体の機能や器官を回復させる再生医療が注目されています。
正常な組織から採取した正常な細胞を培養して増殖させ、これを患部に適用することによって機能を回復させるもので、いわゆる対症療法ではなく根治療法に当たります。
これにより、これまで完治が難しかった疾患が将来的に完治する可能性もあり、再生医療への期待も高まっているところです。再生医療には、血小板由来の濃縮因子を患部に注入するPRP-FD療法や、脂肪由来幹細胞を患部へ注入する方法などの注射・点滴による方法の他、細胞培養によって作成した細胞シートを患部に適用する方法などがあります。
細胞シートを患部に適用する方法では、細胞シートが薄く、破損し易いため、キャリア材が必要となります。
このキャリア材には細胞シートとの適切な密着性及び剥離性が求められますが、従来品では術者の作業性を満足させる材料はありませんでした。
そこで、ニッカン工業ではエレクトロニクスで培った技術を応用することにより、作業性の高いキャリア材としてATTRANを開発しました。
ATTRANは生体適合性基材に植物由来材料をコーティングした安全性の高い材料で、細胞シートとの密着性、剥離性に優れています。

輸送キット開発の背景と目標

平成26年11月25日に再生医療等安全性確保法が施行されたことに伴い、CPCを持たないクリニック等でも再生医療への参入が可能となりました。
しかし、細胞加工物を安全かつ低コストで近距離輸送できる手段の確保が解決すべき課題として残っています。
一般的に培養細胞シートは高価でかつ破損しやすく、培養皿から輸送までの安全かつ操作性の良い方法が求められています。
これまで、細胞シートはガーゼや紙などを用いて輸送されていましたが、破損しやすいために、大学病院内など、至近距離での利用に限られていました。
また、細胞シート輸送用の高価な専用容器を用いることで輸送コストが高くなる傾向があります。
今回、この課題を解決するため、ニッカン工業株式会社が開発したATTRANおよび安価な汎用容器を利用する輸送方法の検討を行いました。
開発目標
開発目標は細胞加工物の近距離輸送を可能とする、安全かつ安価な簡易輸送技術の開発であり、銀座よしえクリニックの協力を得てATTRANを用いた輸送の検証を行いました。
銀座よしえクリニックは、都内に6つの医院を展開しており、小規模CPCを有する都立大院で製造した細胞シートを、ATTRANを使用して都内の他院へ輸送し、細胞の生存率を測定することで当該輸送方法が近距離輸送において実運用に耐えうるものであるかを確認しました。

輸送の流れと方法

輸送の流れ
輸送を行うにあたっての流れは図の通りです。
まず、各院から都立大院に送られてきた細胞を用いて、培養およびシート化が行われました。
次に、培養容器から細胞シートを剥離し、汎用容器への移動と封入を行い、宅配便を使用して実際の輸送を行いました。
細胞の培養とシート化

組織から採取した細胞をCPCで培養し、細胞のシート化を行いました。

細胞シートの輸送用梱包

完成した細胞シートに剥離用培地を添加し、剥離可能になった時点でT75フラスコ用ATTRANをアプライした後、反転させ、さらに4分割ATTRANをアプライしました。
これにより、細胞シートはT75フラスコ用ATTRANと4分割ATTRANで細胞シートを挟み込んだ状態となります。この後、日本薬局方ガーゼで包み、乾燥を防ぐため輸液を滴下し、汎用容器へ移動しました。汎用容器はさらに輸送袋へ入れ、ヒートシールを行い密封しました。

T75フラスコATTRANと4分割ATTRANで表皮シートを挟む
表紙シートとATTRANを汎用容器へ移し日局ガーゼで包む
汎用容器に封入した後、輸送袋に入れてヒートシールし、乾燥と汚染を防止

輸送条件の検討と結果

上記の輸送梱包手順に従って梱包した後、CPCのある銀座よしえクリニック 都立大院から、通常の宅配業者の「クール(冷蔵)便」を想定した輸送(48時間)で各院へ配送し、細胞の生存率をLDHで評価しました。結果は次の通りでした。

条件 温度 時間(H) LDHスコア(%)
静置保管 冷蔵 48 100
近距離輸送(都内拠点間) 冷蔵 48 92.8

まとめ

一般的に細胞シート輸送には高価な専用容器を用いて形態と品質の保持を行いますが、今回、ATTRANを使用することで、安価な汎用容器でも細胞シートの輸送が可能であることが分かりました。ATTRANを使用することにより、

近距離輸送であれば大幅なコスト削減が実現でき

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再生医療がより身近な医療となります

細胞シート輸送に関してお悩みの場合、是非一度ATTRANをご検討ください。
ATTRANを用いた細胞シート輸送についてのご相談も随時お受けしておりますのでお問い合わせページからお問い合わせください。

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