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SARS-CoV-2コロナウイルス(COVID-19)の増殖に推奨されるCO2インキュベーター

2020年3月4日

バックグラウンド

新規コロナウイルス指定されたSARS-CoV-2は、近年出現した他の急速に広がる新規ウイルスと同様に、現在世界的に広がっていますが、当初は動物から人間への感染の結果として現れました。

2003年に最初に報告された、急性呼吸器症候群(SARS)の原因となるSARS-CoVと同様、現在広がっている新規ウイルスは、コウモリに由来¹のベータコロナウイルスです。

SARS-CoV-2のヒトへの最初の感染は、2019年12月に報告された、中国武漢市の海産物および動物市場と突き止められています。人から人への感染が確立されるまで時間がかかりませんでした。

米国疾病予防管理センター(CDC)によると、2020年2月23日現在、ウイルスは既に武漢への渡航歴のないコミュニティにも広がっています。

SARS-CoV-2ウイルスは現在、60カ国、90,000以上の感染者、3,000人以上の死者²をだし、COVID-19と呼ばれています。

CDCは、細胞培養でSARS-CoV-2を成功裏に増殖させ、広い研究コミュニティにウイルスのストックを供給するよう国立衛生研究所のBEIリソースリポジトリを指名しました。調査領域には、治療の有効性に関する抗ウイルス研究、ウイルスの発病と安定性に関する研究³なども含まれるでしょう。

ウイルスの感染性と新興であることから、CDCは現在、「現時点では、BSL3作業慣行を実践しているBSL3ラボを除いて、細胞培養でのウイルス分離とSARS-CoV-2検体の培養で取り出されるウイルス剤の初期特性評価を推奨しない」としています(2020年2月10日)⁴。

ウイルスの伝染は拡大しているので、ウイルスのセキュリティは最重要です。そのため、BSL3研究所であっても、実証された汚染制御機能があるCO2インキュベーターでウイルスを増殖させることは非常に重要です。
SARSなどの以前のコロナウイルスの大流行時の作業では、特定の細胞株のみが適切な特性を持ったウイルスを増殖させることが実証されました⁵。

つまり、野生型ウイルスに存在する全ての病原因子が発現、研究されることを確実にするために、最適な成長条件も重要です。
Thermo Scientific™Cell Locker™システムは、SARS-CoV-2の培養と生産に適用可能な、汚染コントロール技術とユニークな封じ込め能力とが組み合わさった、最適な培養条件を提供します。

ディスカッション

ほとんどのCO2インキュベーターがSARS-CoV-2ウイルスを増殖させる細胞株を培養できるなか、最も強いタイプと量の病原因子が発現するどうかは、成長環境が決定します6,7,8
これは特に、最近新しい宿主に移動したウイルスに当てはまります9
したがって、宿主細胞とウイルスを、変化を最小限に抑え、ドアを開閉後に設定条件に迅速に復帰するよう設計されたインキュベーターで培養することが肝要です。培養条件の変動は、細胞増殖の変異を引き起こす可能性があります 10

このウイルスの新興性は、さらなる防御を必要とします。
それがCDCがBSL3の実験室環境と作業慣行下でのみウイルスを扱うよう推奨している理由です。
ウイルスの拡散を制限するため、然るべきCO2インキュベーターは、実証された汚染制御技術を提供すべきです。
そのような技術の例には、30秒のドア開放後5分以内にISOクラス5クリーンルーム状況を提供できるチャンバー内HEPAフィルター、100%銅のインテリア、自動高温滅菌などがあります。

このような新興ウイルスを培養で扱うためのユニークなオプションが、Thermo Scientific™Cell Locker™システムです。
このシステムはThermo Scientific™Forma™Steri-Cycle™i160 CO2インキュベーターで利用可能です。
セルロッカーシステムは、個々の培養チャンバー内に培養物を隔離します。
隣接するセルロッカーチャンバーのドアが、培養容器を出し入れするために開けられても、閉じたチャンバーが指定された環境を保持できること11、それによって培養が受ける変動を最小限に抑えることが確かであるよう設計されています。
セルロッカーチャンバーが閉じられていると、最小のウイルスを含む微生物は出入りできません12

セルロッカーシステムでの隔離は、培養の分割を可能にします。例えば、異なるウイルスクローン、異なる宿主細胞タイプ、または異なる毒性因子の隔離です。

セルロッカーシステムは、CO2ガスとN2ガスの消費を最大50%減らすようにも設計されています。少量の培養液からの蒸発も最大で50%減らします。例えば違う培養やクローンで毒性アッセイを行うなど、マイクロウェルプレートで培養する場合に重要です。

関連製品

Thermo Scientific™ Forma™ Steri-Cycle™ i160 CO2 incubator with Cell Locker™ System

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■ Thermo セルロッカーシステムの保護性を検証したアプリケーションノート(2019/3/15公開)
Thermo Scientific セルロッカーシステムは、感受性の高い細胞への微生物の進入を防止します(PDF)

参考文献

  1.  Centers for Disease Control and Prevention. Coronavirus disease 2019 (COVID-19) situation summary. https://www.cdc.gov/coronavirus/2019-ncov/summary.html Centers for Disease Control and Prevention, United States Department of Health & Human Services. Accessed March 2, 2020.
  2.  Worldometer. COVID-19 coronavirus outbreak. https://www.worldometers.info/coronavirus/
    Dadex. Accessed March 2, 2020.
  3.  Centers for Disease Control and Prevention. CDC grows SARS-CoV-2, the virus that causes COVID-19, in cell culture. https://www.cdc.gov/coronavirus/2019-ncov/about/grows-virus-cellculture.html Centers for Disease Control and Prevention, United States Department of Health & Human Services. Accessed March 2, 2020.
  4.  Centers for Disease Control and Prevention. Interim Laboratory Biosafety Guidelines for Handling and Processing Specimens Associated with Coronavirus Disease 2019 (COVID-19). https://www.cdc.gov/coronavirus/2019-nCoV/lab/lab-biosafety-guidelines.html Centers for Disease Control and Prevention, United States Department of Health & Human Services. Accessed March 2, 2020.
  5.  Kaye M, Druce J, Tran T, Kostecki R, Chibo D, Morris J, Catton M and Birch C. SARS-associated coronavirus replication in cell lines. Emerg Infect Dis 12(1): 2006.
  6.  Teng M, Luo J, Xing G-X, Cheng N, Yang Y-Y, Deng R-G, Zhang G-P. Main factors influencing the efficient propagation of virulent or attenuated strains of Japanse encephalitis virus in BHK-21 cells. Indian J Virol 23(3): 2012.
  7.  Badgett MR, Auer A, Carmichael LE, Parrish CR, Bull JJ. Evolutionary dynamics of viral attenuation. J Virol 76(20), 2002.
  8.  Ping J, Lopes TJS, Nidom CA, Ghedin E, Macken CA, Fitch A, Imai M, Maher EA, Neumann G, Kawaoka Y. Development of high-yield influenza A virus vaccine viruses. Nat Commun 2015.
  9.  London B, Hadfield JD, Day JP, Smith SCL, McGonigle JE, Cogni R, Cao C, Jiggins FM. The causes and consequences of changes in virulence following pathogen host shifts. PLoS Pathog 11(3): 2015.
  10.  Thermo Scientific Smart Note: Which incubation parameters are most important for proper cell growth and expression? Thermo Fisher Scientific PFCO2SMARTNOTE 0715, 2015.
  11.  Bates MK, Schneider J, Love M, Low L. Cell Locker System segregates stem cells, protecting from contamination and enhancing environmental stability. Thermo Fisher Scientific AN-CELLLOCKERSC 0120, 2020.
  12.  Bates MK, Love Parrucci M. Thermo Scientific Cell Locker System prevents entry of microorganisms for protection of sensitive cell cultures. Thermo Fisher Scientific ANCELLLOCKER 0119, 2019.