アプリケーションノート

anvajo R-300アプリケーションノート vol.5
~分光光度計~

fluidlab R-300
分光光度計

※本資料はanvajo社が作成した資料(英文)を当社が日本語に翻訳したものです。本ページ下部のリンクボタンから、原文のPDFファイルをダウンロードすることができます。日本語訳に当たっては可能な限り読みやすいよう、一部内容を簡素化している場合がございます。英語原文と日本語訳の内容に相違がある場合は英語原文の内容が優先いたします。必ず英語原文と併せてご覧ください。

Introduction

分光光度計は、化学や生物、医学的な様々な試験の評価に広く使用されている重要な計測機器です。分光光度計の測定精度を保証するため、測定系の測光とスペクトルの精度の両方を決定出来る標準物質があります。
これらの標準物質にはキュベット型のガラス容器や、中性ガラスフィルター、標準溶液などがあります。
fluidlab R-300は、Hellma Analytics製の標準フィルターを使用して製造段階最後の品質管理工程で校正を確認しています。トレーサビリティ向上のため、これらの数値は装置ごとにデータベースに保存されています。

これらの試験の許容限界値は米国薬局方857(USP)で規定されています。米国の製薬企業はこのガイドラインに準拠する機器のみを使用するよう、法律で義務付けられています。
欧州の企業もこのガイドラインに従っており、準拠している場合のみ、米国市場で活動できます。
試験の限界値については、欧州薬局方2.2.25(EP)はほとんどの点で米国版と同一ですが、例えば測定の直線性などに関するさらなる限界値を含んでおり、万全を期すためには、EPへの準拠についても検討する必要があります。

ガイドラインに記載されている紫外可視分光計の規格は、最も必要とされるものであり、薬学とバイオテクノロジー分野両方で基準が設定されています。anvajo社はガイドラインに従って厳格な品質基準を設定しているため、fluidlab R-300を体外診断や食物、水の分析など、規制のある分野で使用することができます。
※fluidlab R-300は日本において薬機法に定められる医療機器としての承認等は受けておりません。診断・治療等の医療目的で使用しないでください。

Materials and methods

Materials

fluidlab R-300を使った分光測定については、F201, F202, F203、F4のHellma Analytics (Müllheim, Germany)製の4種のフィルターを使いました。
さらに、複数の装置間での直線性の比較や、再現性確認のためPMMA(アクリル)標準キュベット(10×10mm)に複数濃度のメチレンブルー(Sigma, Darmstadt, Germany)を入れたものを使用しました。

分光パラメーター

複数の吸収特性を持つ中性ガラスフィルターを使用しました。吸光度0.3-2.1の範囲で、正確なで確認を行います。

USP limit Ep limt
Accuracy
VIS region 0.01 < 1A
1% > 1A
0.01 < 1A
1% > 1A
Precision
VIS region 0.005 n/a
Cofficient of determination R2
VIS region n/a 0.999
波長パラメーター

ホルミウム/ジジミウムフィルターを使用しました。可視光(VIS)の各波長で、このフィルターの吸収極大の確認を行います。

USP limit Ep limt
Accuracy
VIS region ±2nm ±3nm
Perecision
VIS region ±0.5nm ±0.5nm

米国薬局方857に従い、fluidlab R-300で測定しました。ブランクは、空のメタルフレームを使用して測定(Iblank)しました。次に、同じフレームに中性ガラス(特定の吸光特性を持つ)を入れたものを使用し、フィルターのサンプルを測定(Isample)しました。
これらの2つの測定の関係については、以下の式で表されます:
E = -log10(Iblank/Isample)
最終的に、画面に表示された測定値を手動でExcelに転記しました。続いて、Hellma Analyticsから提供されたデータシートを使用し、吸光度(E)を比較しました。

Photometric check

正確性

測定結果の品質に直接影響を及ぼすため、分光光度計の品質管理において、分光精度のテストが極めて重要です。研究者や技術員が測定結果を信頼するために必要な基準は、薬局方において、全波長範囲の全ての測定が吸光度の許容値として0.01または1%以内であることとされています。
表1より、anvajo社fluidlab R-300は基準を満たしていることがわかります。Hellma Analyticsの標準フィルターを使うことで、fluidlab R-300の品質管理を行うことができます。一般的に分光光度計は、この方法に従って、1-2年ごとにチェックを行います。

Wavelength(nm) F201 F202
Target Actual Difference Target Actual Difference
440.0 0.3304 0.325 0.0054 1.6321 1.625 0.0071
465.0 0.2946 0.291 0.0036 1.5121 1.504 0.0081
546.1 0.3049 0.304 0.0009 1.5066 1.499 0.0076
590.0 0.3354 0.335 0.0004 1.5409 1.53 0.0109
635.0 0.3386 0.342 -0.0034 1.4512 1.44 0.0112
Wavelength(nm) F203 F4
Target Actual Difference Target Actual Difference
440.0 2.177 2.157 0.020 1.0674 1.057 0.0104
465.0 2.0212 2.011 0.0102 0.9897 0.984 0.0057
546.1 1.9823 1.971 0.0113 1.0108 1.002 0.0088
590.0 2.0305 2.014 0.0165 1.0694 1.058 0.0114
635.0 1.9193 1.902 0.0173 1.0291 1.018 0.0111

表1:参照値と測定値の概要。米国薬局方においては、両者の差が0.02未満であることと規定されています。

再現性

測定の再現性は、装置の機械的公差(特にサンプルシャフト)や分光測定の経時的安定性、測定値の記録の正確性を評価する上で重要です。米国薬局方では、各装置で6回以上の測定を行い、吸光度の標準偏差が0.005または0.5%と規定されています。ガラスフィルターを使用することで簡単に測定できます。表2は、n=10で繰り返し測定を行った結果を示しています。

Wavelength(nm) s(F201) s(F202) s(F203) s(F4)
440.0 465.0 546.1 590.0 635.0
0.0017 0.0018 0.0016 0.0017 0.0011
0.0008 0.0010 0.0010 0.0009 0.0016
0.0014 000014 0.0014 0.0010 0.0016
0.0017 0.0020 0.0023 0.0015 0.0007

表2. ガラスフィルターの再現性測定。全ての測定の標準偏差は、要求される限界値0.005未満であり、米国薬局方に準拠していました。(n=10)

表3では、着色サンプルを用いて再現性について再テストを行いました。このテストでは、メチレンブルーをキュベットに入れ、これを20回装置にセットして測定値を記録しました。標準偏差は1%未満と極めて良好でしたが、ガラスフィルターと比較するとわずかに高くなりました。これは主に、ガラスフィルターよりも、キュベットの光学特性の悪さや表面が不均一であること、そして測定プロセスに起因しています。

Wavelength(nm) s(F201) s(F202)
N=20 Methylene blue(33±5%) Methylene blue(66±5%)
1 1.5 1.905
2 1.494 1.916
3 1.508 1.947
4 1.494 1.904
5 1.508 1.947
6 1.51 1.944
7 1.512 1.947
8 1.518 1.928
9 1.508 1.968
10 1.508 1.968
11 1.512 1.927
12 1.504 1.952
13 1.506 1.919
14 1.504 1.907
15 1.502 1.909
16 1.52 1.925
17 1.517 1.936
18 1.504 1.914
19 1.514 1.93
20 1.512 1.903
Avg 1.509 1.927
Std 0.0054 0.0097
Std % 0.54 % 0.97 %

表3. メチレンブルーサンプルを使用し、装置へのセットと取り出しを20回繰り返した際の再現性

再現性

直線性はフィルターを用いた測定から得ることができます。測定結果の正確性が高い場合、図1から分かるように、直線性も高くなることが考えられます。測定値に適合する直線の決定係数R2は1で、欧州薬局方に規定されるR2の限界値である0.999を上回っています。なお、米国薬局方では、直線性に関する目標値は規定されていません。このように、吸光度0.3 - 2.15の範囲で直線性は理論上の最大値に達しています。結果的に、直線の範囲が分光光度計の値の範囲を表していることとなり、吸光度値としては0 - 2.0の値が表示される必要があります。


図1. Hellma Analyticsの標準値と、fluidlab R-300測定値の比較。決定係数R2は1で、直線性は非常に良好でした。Y軸切片の値は0.0003で、システムの測定精度を下回っています。

希釈系列の直線性の測定は、図2にプロットしました。トリパンブルー(細胞染色によく使用される色素)の希釈系列を、fluidlab R-300と、世界中でよく使用されている装置の2機種で測定しました。グラフのカーブから、吸光度1 - 2.4 (R2 = 0.998 および R2 = 0.962)の範囲において、anvajo社のfluidlab R-300はもう一つの装置と比較して、直線性が高いことが分かります。広い範囲にわたって測定結果の直線性が高いほど、高濃度範囲でのアッセイの評価を正確に行うことができます。


図2. トリパンブルー希釈系列におけるfluidlab R-300と他機種の直線性の比較。R-300は他機種に比べ、広い範囲で直線性が高くなりました。

装置間の再現性

anvajo社で製造する全ての分光光度計は、「正確性」のセクションで述べた条件に適合しなければなりません。測定結果において誤差が小さい装置間の再現性は、異なる装置で行われた測定の同等性を保証するための重要な要素です。これは、様々なアプリケーションに当てはめることが可能です。生産工場では、測定のために複数の装置が異なった場所に置かれていることはよくあることで、また別の研究室が結果やデータを交換したいというような場合もあります。こういった場合、結果が同等であるということが保証されなければなりません。表4は、製造段階の装置をランダムに4台選び、一連の測定における装置間の誤差を示しています。この結果、最大の誤差が0.6%であることから、装置間の誤差は十分に小さく、異なる装置間の測定結果が同等だと考えることが許容されます。

Wavelength(nm) F201 F202 F203 F4
440.0 0.26% 0.29% 0.59% 0.48%
465.0 0.33% 0.22% 0.49% 0.33%
546.1 0.40% 0.33% 0.46% 0.29%
590.0 0.31% 0.50% 0.59% 0.37%
635.0 0.43% 0.57% 0.65% 0.40%

表4. 複数波長での吸光度の装置間誤差。装置はランダムに選択したfluidlab R-300(4台)

Summary

anvajo社のfluidlab R-300は、米国薬局方および欧州薬局方の全ての基準を満たしており、医薬品製造に使用できることが示されました。
これは、fluidlab R-300を用いた高品質な分光光度測定や、医療分野・生命科学分野におけるユーザーが期待する、ラボレベルの品質のPOCテストの確立のために、良好かつ信頼性のある基盤を形成しています。


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